リモートワークをする機会が増えた今、チームメンバー個人の心理的安全性を高めることは以前にも増して重要になったリーダーの役割だと言えます。例えば、zoomのタイムラグによる発言のクラッシュへの不安や、オフィスにいる時ほど気軽に他のメンバーに声をかけられないストレスなど、意見をシェアできる機会が減ったことが挙げられます。社員一人ひとりの心理的安全性を高めることで、発言をするハードルを下げることができます。そこで、今回はその第一歩として「アイコン設定」を推奨します。
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個人情報を見せないと暴力的に?
Hutchensらによると、個人情報を見せない状態でのCMC(コンピューターによって媒介されたコミュニケーション)では、Flamingと呼ばれる、CMCでの敵対的で攻撃的な相互行為が増える傾向にありました。個人情報が知られていないことをいいことに自分の代わりとなるペルソナを作り上げ、普段では取らないような攻撃的な態度をとることができるからです。読者の皆様もYoutubeやTwitter、Yahoo Newsのコメント欄などの匿名のプラットフォームで暴言を見かける回数の方が、FaceBookやLinkedInなど自分の名前や顔、職場などが見えやすいプラットフォームでより多いのではないでしょうか。
コンピューターを介さなくても顔が見えないと言葉遣いが暴力的に?
韓国のコールセンター が行った調査によると、やはりコンピューターを介さずとも顔が見えない状態でのコミュニケーションでは、相手の肩書きや年齢などの「社会的手がかり」が見えづらい状態のため、言葉遣いが暴力的になる傾向にあるようでした。しかし、同じ調査で待機中の音楽の代わりにオペレーターの家族の声(例: 今から電話に出るのは私の大事な孫、子、親ですなど)を流し、相手の社会的手がかりが見えやすくなると、顧客からの暴言が減り、オペレーターの満足度も上がることが判明しました。
上記二点を踏まえると、アイコンを設定し社会的手がかりが見えやすくなると、コミュニケーションの質が向上し、心理的安全性が高まることが予測されます。
*ペルソナ: 外向きの、表面的な人格
顔と名前の一致が容易
インターナショナルな企業が増えてきた昨今、日本人社員もローマ字表記で名前を表記する機会が多くなりました。従来では漢字で区別できた名前も、ローマ字表記だと字面が似ることも多く、アイコンなしでは識別し辛い場面も増えました。実際に弊社でも新しいインターン生の名前が既存のインターン生の名前が似ていたことがありました。そんな時に例えばSlackのアイコンが設定されていると、誰が発言しているかが一目瞭然です。
第一印象が良くなる
David Whiteらの研究によると、アイコンから得られる第一印象は大事な選択、例えば誰を雇うか、誰と友人になるかにもつながることが判明しました。また、LinkedInリサーチによると、顔写真付きのプロフィールはないものに比べて21倍のアクセス数と9倍の繋がりリクエストがあったことがわかりました。
上記のことから、オンラインで仕事をしていく上で直接社内外の人と面会する機会が減った今、特に営業担当の方や社外の方との関わりが多い方にはアイコンを設定することをおすすめします。最近はSlackが社外の方とコラボレートする際に使われるようになったり、LinkedInで仕事を探す機会が増えてきているので、営業担当以外の方にもアイコンを設定するメリットは大いにあるのではないでしょうか。
個人的な私の経験をお話しさせていただくと、私はLinkedInでアイコンの設定をしていない人からの繋がりリクエストは承認しません。SNSで多種多様な詐欺師やなりすましを見てきたからです。Instagramでアイコン設定されているアカウントすら詐欺師が運営している場合があるのに、顔写真のないアカウントを信用するのは特に20代から30代の方には難しいはずです。これからデジタル時代を生き抜くためにも、アイコン設定は必須だと言えます。
リーダーがファーストペンギンになる
ファーストペンギンとは、最初の一羽が身をもって海の中の安全を確保するペンギンの特性に因んで名付けられた、リスクを恐れず最初にベンチャー精神を持って行動する個人や企業の呼称です。リーダーがまずアイコンを設定すること、またそれを推奨することで「アイコン設定により自己を表現することは受け入れられている」ということが伝えられます。自分の写真の公開をするハードルが下がると、それに伴って自己表現をするハードルも下がります。
自己を表現することが当たり前になると、チームメンバーはそれによって自分の印象、ステータス、もしくはキャリアへの悪影響を心配することがないと思える環境、つまり心理的安全性の高い環境を作り出せます。従って、リーダーがまず「ファーストペンギンになる」ということはアイコン設定を推奨する上で大切な項目の一つであることがわかります。
心理的に安全ではない状況を理解する
心理的に安全な状況を作るためには、「心理的に安全ではない状態」に陥るのを防ぐためにも、それを認識していなければなりません。心理的に安全ではない状態とは主に以下の4つの項目に分類できます。
無知: 質問をしたり情報を求めたりするときに感じる
無能: 間違いを認める、支援を求める、失敗する可能性が高いことを認めるときに感じる
ネガティブ: 現在、過去を批判的な目で評価しようとするときに起こる
邪魔をする人: 他の人の時間を奪っていないか、邪魔をしていないかと考えすぎて質問できない
参考:「withテレワーク時代」~テレワークを振り返り、新しい働き方を考える~ 【ニューノーマル】2020
チームメンバーがこのような心情になる可能性を考えて、リーダーが率先して「質問はないか」「助けは必要か」と聞いて回ったり、仕事を評価する際には「仕事」にのみ言及してチームメンバーの人間性には言及しないよう意識したりすることで、心理的安全性を徐々に作り出すことにつながります。
「心理的に安全な環境を作り出す」と言うと少し難しそうに聞こえますが「アイコンを設定しましょう」と言うと何だかもっと気軽に始められそうですよね。まずはアイコンを設定するところから、心理的に安全な環境づくりを始めてみませんか?
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