
前回、ベルリンはスタートアップ企業にとってハブ的都市と紹介をしましたが、今回は「ベルリンでのキャッシュ事情」と題し、より生活やライフスタイルに密着したテーマでベルリン(ドイツ)の紹介をしていきたいと思います。特に今回は、隣国のオランダに在住しているINNOOV海外部のがっきーさんが執筆した「日常に行き届いたオランダのキャッシュレス事情とは
世界的に見てもシリコンバレーやロンドンに続き、近年ベルリンはスタートアップの聖地と言われるほどに成長している事はご存知でしょうか。特にIT・デジタル系の起業が多いのが特徴であり、エンジニアの給与水準に関してみても、2021年Startup Genomeのレポートによるとベルリンは前年より順位は下げたものの世界給与水準と比べても高く、優秀なエンジニアが集まりやすい環境であると言えます。
ではなぜベルリンがここまで注目されているのか?今回はその謎を解説・紹介していきます。
目次
ベンチャー企業って和製英語?
日本でよく耳にする「ベンチャー企業」という単語は、一般に独自のアイデア・技術を基に、新サービスや新ビジネス展開をする勢いのある企業一般を指します。しかし、英語にはVenture Capital やVenture-backed companyという単語はあるものの、「ベンチャー企業」という単語はありません。実はこの単語、日本人が作った和製英語なのです。
一方で「スタートアップ企業」という単語はシリコンバレーで使われ始めた英語から来た単語で、一般的にイノベーションを起して短期間で莫大な成長率でビジネス展開をする企業の事を指します。その為、設立年がいつかではなく、そのビジネスモデル自体の価値提供において人々の生活や社会にどう変化をもたらすのかといったイノベーション性や、ゴール(EXIT)を短期間に設定しているという事が大きな違いになります。
ビジネスモデルを比較してみよう
ベンチャー企業という単語は和製英語という話をしましたが、日本で俗に言うベンチャー企業とスタートアップ企業のビジネスモデルに少しニュアンス的違いがあるのも確かです。
簡単に言えばベンチャー企業の場合、既存のビジネスモデル(サービス)をベースに収益向上・規模の拡大を目指す事が多く、中長期的に安定的な利益の追求を求めるケースが多い事が特徴です。また、最終目標を株式公開に設定する場合が多く、目標達成までの期間が長めに設定されます。一方スタートアップ企業とは、全く新しいビジネスモデルを手探りで一から構築していき、短期間でイノベーションを起こしながら莫大な収益を上げる事を目指します。そのため、製品やサービスがリリースされるまで赤字となる場合が多いですが、リリース後に巨額の収益を上げる事も少なくありません。また最終的な目標として、株式公開+事業の売却を盛り込んでいる事も多いのが特徴です。
筆者の住んでいるベルリンは、ロンドンに続き、ヨーロッパのスタートアップ資本の中心として注目・人気とされている都市のひとつになります。特に近年、イギリスがEUから脱退したのを受け、EUでビジネス展開を考えているスタートアップ企業がベルリンに集結しています。また、ベルリンでは年間500社以上のスタートアップ企業が誕生していますが、そのうちの3割はIT・ソフトウェアサービスを基盤とした企業のようです。では、なぜベルリンが今人気なのでしょうか?
ベルリンが人気な理由① 地理的要素
ベルリンはドイツの首都であり、ヨーロッパ諸国のほぼ中心に位置します。その為、ヨーロッパ諸国の新しい情報が手に入りやすい事、そして特に東欧諸国(ポーランドやハンガリー等)から働き口を求めて人が集まってくることがスタートアップ企業が集結する理由のようです。更に、多様なエリアから移り住む人が多い事もあり英語で不自由少なく生活が出来るという事もポイントかもしれません。
ベルリンが人気な理由② 文化的・歴史要素
ベルリンは長い間壁を隔てて東西に二分割されている事もあり主な産業がありませんでした。また、ベルリンの壁崩壊後も特に東部ベルリン地区では開発が遅れており、何もない地に新しいビジネスの可能性を感じた起業家が集結したことからスタートアップ企業が集まるようになりました。また、現在は180を超える国々から人材が集まる国際都市にまで発展し、言語の壁もドイツの他の都市と比べ、低くオールイングリッシュな企業も珍しくありません。
ベルリンが人気な理由③ 物価や金銭的要素
ベルリンはヨーロッパ経済最大の中心地として知られており、上場の機会も豊富にあります。また、多くの起業家にとって悩みの種であるのが資金調達であると思いますが、ベルリンにはリスク投資仲介ポータルやクラウドファンディングプラットフォームが数多く存在します。(参考:Crowdfunding Berlin )その為起業を試みる人々にとっては大変魅力的な都市であると言えます。また、経済最大の中心地であるもののベルリンはドイツ国内でも物価が安く、経済的な規制が少ないため生活もしやすく、豊富に開発資金の投入が出来ます。
ベルリンが人気な理由④ 制度や支援策的要素
先ほどベルリンには仲介ポータルが数多く存在すると説明しましたが、ベルリンでは経済振興公社(ベルリン・パートナー)によるサポートや、政府の支援を手厚く受ける事が出来ます。スタートアップ企業への資金調達支援や、条件は設定されているものの創業当初の企業には毎月2,000ユーロの補助金を支給等の支援が受けられます。また、ベルリン経産省経済エネルギー公共企業局主催の「アジアベルリンサミット」をはじめとする、スタートアップ向けの投資家マッチングイベントや、起業家同士での情報交換イベントも盛んに行われています。
(参考資料:イベントが充実、ドイツ随一のスタートアップ拠点に(ドイツ・ベルリン) | 欧州に学ぶ、スタートアップの今 - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 )
Zalando社:https://corporate.zalando.com/en
ヨーロッパ諸国最大規模のファッション系アパレルECサイトを展開しているZalando(ザランド)。日本でいうZOZOTOWNのような立ち位置であり、中には日本未入荷の海外限定品を購入する際等に利用したことが有る方もいらっしゃるかもしれません。実はこの企業、ベルリン出身のオンライン通販会社なんです。
2008年創業とまだまだ新興ではあるものの成長率が未だ二桁以上と勢いのある企業です。衣服から靴、アクセサリーまで50万超のアイテムを取り扱っており、アクティブユーザー数も3000万人以上とリピーターが多いのも特徴の一つです。
N26社:The Mobile Bank
N26はドイツでは誰もが知っているオンラインバングの一つです。デジタルにフォーカスしたサービスを特徴とし、口座開設の申請から審査まで約15分程、オンラインで完結します。(途中、ビデオ電話で本人確認有)更に、ドイツ語が不安な人は英語でもOKです。その他、年間口座維持費0円、出金/入金は基本的にCASH24というグループ加盟店から行う従来の銀行のイメージとは少し異なるスタイルを確立しているのが特徴です。
Get Your Guide社:Book Things To Do, Attractions, and Tours | GetYourGuide
Get Your Guide(ゲットユアガイド)は、旅行に関するアクティビティ・現地ツアーのオンライン予約サイトです。海外旅行に行く際に利用している!という方ももしかしたら多いかもしれません。
実は、こちらもベルリンに本社を置き、スタートアップとして創業した企業の一つです。今では、ヨーロッパとアメリカの都市を中心に、世界170カ国以上の旅行者に利用されており、日本でも日本国内の旅行ツアーやイベントの検索と申込みが可能になりました。
今回は、ベルリンがスタートアップ界隈から注目されている理由や、スタートアップとして勢いに乗っているベルリン出身企業を紹介しました。日本でも近年数多くのスタートアップ企業が誕生していますが、イノベーションが止まらないベルリンのようにINNOOVも負けず今後もイノベーションを起こしていく予定です。
質問等がありましたら、右下のチャットボタンよりお問い合わせください。
前回、ベルリンはスタートアップ企業にとってハブ的都市と紹介をしましたが、今回は「ベルリンでのキャッシュ事情」と題し、より生活やライフスタイルに密着したテーマでベルリン(ドイツ)の紹介をしていきたいと思います。特に今回は、隣国のオランダに在住しているINNOOV海外部のがっきーさんが執筆した「日常に行き届いたオランダのキャッシュレス事情とは
HubSpotのイベント『INBOUND』にて、HubSpotのCEOであるYamniさんは「繋がり」が弱まっていることを現在のビジネス課題として挙げていました。このイベントに関するレポートは既に数多くのメディアからリリースされ、今世界中の企業がこの繋がりを改めて考えています。