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公平な評価が伴わない工数管理の実態|がっきーの海外インターン体験記②

こんにちは、SAFe®︎ SAのがっきーです。SAFe®︎ SAとは、企業のリーンアジャイルへの変革に向けて、SAFe®︎を導入するために必要な知識とステップを理解しているリーダーの一人です。このシリーズでは筆者がSAとして海外インターンを経験した際に感じたペイン(ここでは、企業での課題点を身に染みて感じるという意味)をシェアします。

前回の記事のまとめで、特にリモートで働く上では個人の業務負担の透明性を上げることが重要であることをお話ししました。今回は第二弾として透明性を上げるために具体的に何から始めればいいのか、それを取り入れるメリット、そしてそれに伴ってなぜ工数管理が必要なのかを実体験を交えてお話しします。

 

目次

  1. Kanbanを取り入れることから始める

  2. 理解されにくい?Kanbanを使うメリット

  3. わたしが目にした工数管理

 

 

Kanbanを取り入れることから始める

Kanbanとは

Kanbanとは、課題(タスク)をTo do(これからすること)、WIP(Work In Progress: 進行中)、Done(完了)に振り分け、作業の割り当てを可視化する手段です。リモートワークが盛んになる前のKanbanでは、オフィスのホワイトボードに課題を書いたポストイットを貼り付けることで自分やチームメンバーの業務負担や作業内容を確認していました。Kanbanはスクラムと同じくアジャイルの思想を基にした手法のひとつですが、スクラムと違ってKanbanを導入する際には既存のワークフローを変更する必要がないのが特徴のひとつです。したがってKanbanは作業を可視化するにあたっての第一歩として取り掛かりやすいのです。

kanban office (1)

Kanbanを使い始めるコスト

新型コロナウイルスの影響でまだオフィスに復帰しづらい状況が続いている今、Kanbanをオンサイトでホワイトボードを使用して導入することは難しいでしょう。Jiraを使えばそれが解決すると言ってしまえば簡単なのですが、そう簡単にはいきません。(Jiraは10ユーザーまで無料で使用できるので、従業員が10名以下の企業の皆様、朗報です!)

Jiraは一言で言うと従来のKanbanよりさらに詳細、そしてオンラインで管理できるツールなのですが、Kanbanがうまく使えるかわからない段階でいきなりJiraを導入するハードルは高いことと思います。そこでMiroというオンラインホワイトボードを使えば、手軽に(ホワイトボード3枚までは)無料でKanbanを使い始めることができます。Miro内のKanbanテンプレートを使うもよし、簡単に区切り線を書いてポストイットで課題管理を始めるもよし。比較的簡単に、無料でKanbanを使い始めることができます。

慣れてきてホワイトボードでは物足りなくなった頃、もしくはもうすでにKanbanに興味がある場合にはぜひJiraを使っていただきたいというのが私個人としての本音ではありますが、そうでない場合でもまずはMiroでKanbanを試してみて、課題が可視化されるとスムーズに課題が分配されるということを体験していただければなと思います。

ちなみにJiraでKanbanを使うとどんなことができるの?

弊社ではJira Softwareを導入するサポートを行なっているのですが、Jiraを使うとプロジェクト毎にボードを分けられたり、同時進行中の課題の数を制限することで非効率な部分を特定したり(その理由はこちら)、課題の詳細情報を入力できたり、Slackと繋ぐことで課題の進行状況を逐一通知したり、Confluenceと繋ぐことでその課題に関わるドキュメントへすぐにアクセスできたり…ホワイトボードを使うよりもかなり多くのメリットがあります。Jiraの製品情報に関しましてはこちらをご一読いただければ幸いです。

 

 

理解されにくい?Kanbanを使うメリット

タスクの可視化とコミュニケーションの活性化

前述の通り、Kanbanの一番のメリットはタスクをチーム内で可視化できることです。したがって、一番タスク量が少ない人に新しいタスクをアサインすることができます。加えて、誰がどのタスクを長時間抱えているかがわかるので「今どんな状況か」という質問を飛ばして「今こんな感じで見えているけれど大丈夫か」というところまで踏み込んだ話から始められます。つまり、業務負担がチーム内で透明化されると、チーム内で声を掛け合うきっかけになるので、自然とコミュニケーションが生まれやすくなるということです。リモートで働くと一人で働いている気分になり、孤立しやすい傾向がありますが、そういった問題を解決する手がかりにもなります。

Kanbanを嫌う人とは

Kanbanのメリットを知っている筆者としてはKanbanを嫌がる人などいるのかと疑問に思っていたのですが、驚くほどのKanban嫌いがインターン先にいました。「Kanbanで課題を作成して動かすその1分が無駄」という方と「知らないから導入したくない」という方でした。

kanban confused (1)

前者の方は無駄がとにかく嫌いで効率が全てと思っている方でした。そんな人にこそKanbanがあれば無駄なチャットを減らせるから便利なの、なぜそんなに嫌うのかと最初の数ヶ月は疑問に思っていました。後々彼女は実はチームで協力をせずに、一人でタスクを仕上げてしまいがちだったり、彼女からアサインされたタスクに関してインターンが質問をすると「わからないならもういい」と言い答えてくれなかったりすることがわかりました。このように、コミュニケーションがうまく取れない、もしくは取りたくない上に、自分のためだけにKanbanを使うと考えるとその課題を記入するための数分は無駄に思えてしまうのかもしれません。しかし、本当にチームで働いている方ならば、Kanbanの便利さに気付けるはずです。

後者の方はおそらく同い年のインターンから出た意見が気に食わなかったか、単純に知らないものは怖いマインドだったはわかりません。やはり、たとえ無料でJiraなどのツールを使えるとしても「知らないものを使い始めるのには抵抗がある」「みんなやっていないなら自分もやらない」という方は多いのではないでしょうか。Kanbanはチーム全体で使うことに価値があるので、そのような方への説得は避けては通れないと言えるでしょう。もしKanban導入への理解がどうしても得られなさそうな場合、第三者からの声は意外に届きやすかったりもします。その際はぜひ弊社にご相談ください。

 

 

わたしが目にした工数管理

工数管理で公平な評価を

ここまで読んでくださった皆様、Kanbanさえ使えば全てがうまくいきそうな気がしてきましたね?もう一歩です。個人の作業負担の透明性を最大限に高めるためには、工数管理も並行して進めることが重要です。なぜかというと、それが公平な評価に繋がるからです。

工数管理をすることによってまず、個人がどの作業にどのくらい時間を費やしたかや、その費やした時間に対して出来上がったものの価値はどうだったかなどを知ることができます。

仮にAさんとBさんがいて、同じ負荷の作業をAさんはBさんより早く終わらせられたとします。もし工数管理がされていなければ2人の能力差が曖昧になり、Aさんの能力や努力が埋もれてしまう可能性があります。下手をするとAさんは定時に仕事を終わらせられたのに対し、Bさんは残業をしてBさんの方が残業代によって多く稼げてしまう可能性すらあります。

unfair evaluation image (1)

そこで、工数管理によって従業員が一定期間内に終わらせた作業量とその効率を定期的に確認し、それに準じた評価をすることが大切なのです。作業量と効率に対して明確な評価基準を定めることにより、業務負担の大きな人が見える形で対価(評価が上がる、昇進する、責任のある仕事を任される等)を得られるので、結果的に作業負担の透明性が上がります。

ずさんな工数管理とは

「じゃあとりあえず工数管理すればいいか」と思った方、工数管理のやり方を間違えると、むしろ作業負担が不透明になってしまうかもしれません。というのも、筆者は海外のインターン先でずさんな工数管理の例を2つ見たからです。

ひとつは企業全体として行われていたバジェットのための工数管理です。それは年に二度、2週間のみ「どのような作業をしたか」を30分単位でソフトウェアに入力し、工数を見て予算を編成するというものでした。ここでの気になるポイントが2つあります。

まず、1年間で計4週間分しか工数管理が行われていないことです。予算の編成が目的なのでそれに合わせての工数管理だったのだと予想はできるのですが、もしその2週間がイレギュラーだったら、そのイレギュラーな工数に基づいて予算が組まれることになってしまいます。今となってみれば実はその2週間はイレギュラーで、インターンを含め新入社員が一度に15名程入社した時期でした。一番どの部署も人数が多い時期で、新入社員はオンボーディングに大忙しの時期に「トレーニング」や「ミーティング」として登録された工数は、最大1週間あたり30時間にものぼります。それが普段の工数を代表できるものだったかは大きな疑問となります。

加えて、その工数管理は30分単位かつ個人の感覚により登録されるものでした。中には無理やり週の40時間を適当に埋める人もいました。このように雑で目の荒い工数管理では正しく予算を組むことができないはずなのですが、それを問題視していないので、このような工数管理がまかり通ってしまうのです。

spreadsheet (1)もうひとつの例は、チーム内で行われていたスプレッドシートでの工数管理です。以前弊社ブログでもご紹介させていただいたのですが、スプレッドシートでの工数管理には多くの問題があります。(詳細はこちら)私が個人的に感じた問題は主に3つです。

一つ目の問題は、上記のバジェットのための工数管理と同じく、時間管理が個人の主観によるものであったことです。バジェットのためのものは「今週1週間どうだったか」なので経験に基づいて記入できたのに対し、チーム内での工数管理はその1週間で予想される作業時間をプロジェクト毎に々で記入するものでした。働き始めたばかりのインターンとして、誰からどのプロジェクトのタスクをアサインされるかもわからずに一週間の作業内容を予測するのは不可能でした。加えて、個人の采配で工数管理をしているので、正確さは全くありません。

二つ目は、タスクの細分化された部分が見えないことです。プロジェクト毎に時間を当てはめていたので、実際にそのプロジェクトで何をしているのかを見ることができません。週次ミーティングで詳細は話し合うのですが、チームメンバー複数人の細かい作業内容まで覚えていられるとは考えにくいですよね。したがってこのやり方では透明性に欠けると言えます。

もう一つの問題は、1週間が終わるとそのデータが消されてしまうことです。同じスプレッドシートに時間を書いては消してを繰り返して時間を入力するので、過去のデータが一切残りません。それでは実際にかかった時間との比較ができないので、予算編成のためにも、生産性や工数の正確性を上げるためにも使えません。

上記のようなずさんな工数管理では正確性を担保したり、工数を使って評価をすることなどできません。したがって、業務負担の透明性を上げることはできないのです。そこで、このような状態に陥らないために、JiraとTempoを組み合わせて使うことによって、Kanbanの動きを自動で計測し、より正確な工数管理を行うことができます。詳しくはこちらをご参照ください。

 

 

まとめ

今回はKanbanとは何かや、それを使うメリット、工数管理の重要性をお伝えしました。Kanbanを使うメリットのところでお話しした通り、タスクの透明性の上昇とコミュニケーションの活性化には相関性があります。そこで次回はスムーズなコミュニケーションを行うためには何ができるのかについてお話しします。


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