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日本では「新卒」がブランド化しており、新卒という切符があるだけで就活を有利に進めやすくなっています。また、早期退職等で第二新卒になると、再就職が困難になってしまったり、再就職後の出世がしにくくなってしまうケースが多いと言われています。しかし、海外では新卒一括採用という制度や、新卒を優遇する風土はなく、これは日本特有の文化の一部であると言えます。
では海外では、どのように就職活動(以下、就活)を行うのが一般的なのでしょうか?
今回は、このトピックにスポットを当て、ドイツをはじめとする国々と日本の就活スタイルや考え方、就活までの準備方法の違いなどを紹介していきます。
目次
新卒が有利なのは日本だけ?
日本では、「企業文化の継承が容易であること」、「一括/全体研修が行いやすいこと」、そして「採用コストが比較的安価であること」などから新人一括採用という人事採用方法が、比較的メジャーであるかと思います。ですが、これは日本独自の採用スタイルであり、海外では就労経験のない学生を定期的に一斉採用する形態の採用方法がないということはご存じでしょうか。
そのため海外の方が日本で働く際、毎年4月に大学卒業ほやほやの新社会人が入社してくるということや、入社後に行われる全体研修やオリエンテーション等実際の業務に取り掛かるまでのタイムラグに違和感やカルチャーショックを感じる方も多いようです。
日本と制度が似ている部分も多いドイツでも、人事採用方法に新卒一括採用という方法は取り入れておらず、入社後は簡単なオリエンテーション後、すぐに業務に取り組むスタイルが一般的です。
海外では何を重視しているの?
ドイツでは入社後、簡単なオリエンテーションを得てすぐに会議や、小ミーティングを含む実際の業務に取組みます。ここで、新人担当のマネージャーや先輩社員は、面接時レジュメに記載されていたパーソナルデータから大体の能力やスキルの実測定と評価を行います。この試用(検証)期間はもちろん企業によりけりですが、大体3か月~半年の場合が多いようです。
ちなみにこの検証期間で、スキルがないと判断されてしまうと本当に容赦なく「試用期間内解雇」をされます。また、ドイツは特に成果主義型で即戦力を求めているので、少しでも自分のスキルを発揮していかないとバッサリ切られます。逆に、この期間で、自分のスキルを存分にアピールできれば、プロモーションや給与交渉もどんどん行え、大きな業務案件を任されるチャンスも出てきます。
この試用期間は本来自分のための期間でもあるので、社風が合わないと感じたり、業務内容がやりたい内容ではなかった場合等は、退職ができます。ドイツでは、自分への投資をしっかり行いより自分にあった雰囲気の企業や、やりたい仕事を見つけるスタイルの働き方やマインドを持っている方が多く、「退職=ネガティブ」ということには、あまりつながらないようです。
最後に、日本では就職までに取得した資格やスキルをレジュメに記載したり、面接時に話すことはありますが、実際に現場でその検証をされることはここドイツより少ないのではと感じました。また、退職=ネガティブととらえられがちな日本ですが、この部分においても考えの違いが明確にでていると感じます。
インターンシップや職業訓練でスキルを磨く
まずここまでの内容を含む、日本とドイツの就職活動時の大きな違いを大まかにまとめてみました。(例外もあるかと思いますのでその点はご了承ください)
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日本 |
ドイツ |
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特徴 |
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面接時 |
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就活時 |
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入社後 |
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まず、ドイツには日本のような総合職という概念がありません。これは新卒採用がないことと同じく、日本での働き方との大きな違いであると思います。つまり、ドイツでは、大学入学時や職業訓練に専攻した分野でのみの就職活動/就労が基本なのです。
専攻科目を勉強する上で欠かせず学生が行っていることが「インターンシップ (der Praktikanten) 」への参加です。インターンシップではビジネス全般+専攻知識やスキルを深めていきます。
また、ここドイツでは「職業訓練 (die Ausbildung) 」という就業のために必要となる理論と実務を並行して学ぶというコンセプトの教育システムもあります。ドイツでは通常、15歳までの義務教育修了者は、大学進学に向けてギムナジウム上級(日本の高校にあたる学校)に進むか、職業訓練を受けるかのいずれかを選択します。近年では、大学卒業後にいったん就労をしたものの違う分野で就労するために改めて職業訓練を受けるということも増えているようです。私の友人にも、現在パン職人になるために頑張っている方がいます!(日本では、スポーツインストラクターの仕事をしていて、退職して一からパン作りをこちらで学んでいます)尚、この制度はドイツやオーストリアの一部にしかない制度です。歯科技工士や介護士、ワイン職人、パン職人、機械整備士など専門技術を必要とする職種が多く、職業訓練生 (Azubi *Auszubildendeの略) は、週に1・2日職業校に通い授業を受け、残りの勤務日は店や会社で働き実務経験を積むこととなっているようです。
その他、ドイツではある程度の実務経験を積んだ学生を、学生アルバイト (der Werkstudenten) として採用している企業も多くあります。企業に実際にアシスタントとして所属/勤務できるため、ここでもスキルアップを図ることができます。このようにドイツには自分に投資できる機会が豊富にあります♪
総合職という概念に潜むリスクとは?
ここまで話してきた通り、ドイツではいかに自身のスキルを磨けるかが就活成功のカギであることがわかるかと思います。日本でもインターンシップを行っている企業や、それに積極的に参加しスキルを磨く学生もいますが、まだまだその制度や行動が直接的に就活に結びついてはいないのではないと感じます。
また、日本では先ほども言った通り「総合職」という概念があり、今まで勉強をしてきていない分野にもチャレンジできるというメリットがある一方で、学んできた知識やスキルが生かしきれないというデメリットもあります。また、即戦力としての起用がなかなか難しくなるため、実際の価値を生み出すまでに時間がかかってしまうリスクも高いかと思います。
一方でドイツのような専門分野でのみの就活/就労スタイルでは、即戦力としての起用や価値提供までのタイムラグが少ないというメリットはあるものの、その道以外での就活および就労となると難しい場合があります。
INNOOVには、ドイツ在住の私以外にも、日本はもちろんインドやオランダからジョインしているメンバーがいます(INNOOVジョインメンバーのプロフィールはこちら)。日本を出る前は、日本の就活スタイルが普通と思っていた私ですが、こちらに来てからはこんな就活方法もあるのだと勉強になりました。ですが!きっとまだまだ知らない就活スタイルが各国にはあるのだろうと思い、さっそくインタビューをしてまとめてみました。(青文字は私の心の中で思った感想です)
① オランダでの就活スタイル
まずオランダでは、学位取得までの忙しさが日本と違うみたいです。(Wow!)テストや課題に終われ、バイトもしたら休憩する暇がない!!!なんてことは日常茶飯事らしく、また学位取得後は1年間の就活ビザも発行されるので、とりあえず忙しくてできなかった自分の好きなことをやってから就活しよう!という人が多いそうです。また、学位を取ったらマスターに進む方が多く、マスター後に就活というスタイルが一般的に浸透しているとのことでした。(確かに私の周りはマスター取得者が多いかも…)
学位取得期間中にインターンを経験しておき、それを足掛けにマスター取得後就活するスタイルも一般的とのこと♪
自分の興味あることや好きなことに向き合う時間を自分で管理しながらしっかり作るという部分において、日本との違いを感じました。また、その空白の期間について突っ込む人もいないということも日本とのギャップではないでしょうか?(日本だとこの期間は何やっていたんですか?って聞かれそう…)
また、LinkedInや大学でのJob Boardから応募したい求人を見つけて就活を行うことが一般的とのこと。日本では、様々な求人サイト(マイナビ、Indeed等)がありますが、Linkedinもその一種でこちらヨーロッパでは知らない人はいないレベルでメジャーな求人サイトです。
最近では、海外で就職を考えている人や海外展開を考えている日本企業の増加に伴い、日本でもLinkedIn利用者が増えてきているもののまだまだ利用者は少ない印象。ちなみにLikedInは、ビジネス版フェイスブックのようなイメージで、求人を探す以外にも、自分のプロフィール(職歴等)をアップしたり、企業のフォローや、投稿、友達申請等もできるようになっています。(ちなみに私のLinkedInはこちらから♪)
ドイツでも大学卒業後に就活ビザが発行されたり、LinkedInが就活のメジャーリソースであったりと似ている部分がたくさん発見できました。
また、インターンを経験したがっきーさん曰く、○○人だから…と差別をされることもなく、インターナショナリズムが職場や、働くメンバーに浸透している部分も素敵だなと感じました。
② インドの就活スタイル
では、インドでの就活はどんなスタイルが一般的なのでしょうか?
インドでは、なんといってもサイエンスやエンジニア系専攻が大人気で大半の人はそのどちらかを選択するようです。(Wow!本日2回目)
そんなインドですが、大学3年次からプレイスメントトレーニングというインターンに近い制度を8割強の大学生は利用して専攻した分野のスキルを高めていき、トレーニング先の企業に就職するスタイルが一般的とのこと。(トレーニング期間は1月頃~5月が大半)(おお!これは、トレーニングという名目ではあるものの、一斉に面接を受けて、働きだす部分は日本の新卒制度に少し似ているかも!!!)
また、毎年10月ごろに企業側から大学にトレーニング生を募るために訪問してくれるため、学生は自分から求人サイトを使用して応募する必要はないそうです。尚、訪問企業はIT企業が多く、ハイレベルの大学にはハイレベルの企業が訪問してくれるようです。(おお!便利~~)
ちなみに、このトレーニングを行う前には就活同様、面接があるようなのですが、相当なことがない限り不合格はなく、複数受験することも可能とのこと。逆に、悲しいことに面接にすべて落ちてしまうと就職はほぼ無理なようです…ジョセくん曰く、トレーニング面接時で聞かれる内容は学習した内容のみに対して、卒業後に聞かれる面接内容は、学習内容を応用した質問や、既に働いている人と同様の内容を含むため面接の難易度が格段に違うからのようです。トレーニング面接は1社だけ!という縛りはないもののこの心情は、これまた日本の大学生あるある4年次の夏までに就職内定がないとやばい!!!というヒヤヒヤ感や絶望感に似ているかなと思いました。
大学卒業後、日本で働きたいという素敵な夢を持っていて現在INNOOVでインターンをしているジョセくんはこのトレーニングは受けていないようですが、インドスタイルの就活方法について細かく教えてくれました!
インドの就活スタイルはドイツや日本ともスタイルが違い面白く、新発見でした!!!
③ 最近の日本国内の状況は???
最後に、最近の国内の様子はどうなのかを岸くんにインタビューしました!
「面接時はスーツじゃなくていいよ!と言われたので、全身黒で行きました!」と岸くん。(おお、そうなんだ…)
最近は、スーツでなくていいんだとギャップを感じた瞬間でした…。とはいえ、彼が受けたのは新卒採用面接ではなく職種もクリエイター系なので他の職種と比べてもともとフレキシブルなのかもしれません。とはいえ、話を聞いていてやっぱり日本だなぁ…と思ったことも少しあったのは事実です。
それは、学歴に対して突っ込んでくる質問をしてくる部分。実は、私の親類にも4月から社会人になる子がいたので聞いてみたのですが、学部を変更したことに突っ込んだ質問をされたそうです。(別にいいじゃない…)また、英検やTOEICの点数についての質問もされたようで、とっても日本だなと感じてしまいました。
こちらは英語は話せて当たり前というスタンスなので、面接がオールイングリッシュだったり、社内公用語が英語という会社がたくさんあります。なので、英語に対しての質問をされることはあまりないかなと思います。また、学歴に対してフラットな質問が多いのも日本特有かなと思いました。ここでいうフラットとは、○○を専攻して○○について勉強しました。という答えだけで完結する質問という意味で、これは総合職の概念があるから?と思いました。
というのも、ドイツやインタビューをしたオランダ・インドでは、大学で専攻をした分野内での就活しか基本的にできません。なので、金融を勉強した人は、金融系のフィールドで、エンジニアならエンジニアのフィールドでと就活分野が制限されるので、大学で勉強したことを理解しているのかを確認するフィールドに合った深い内容や専門的な質問、スキルに対しての質問をされる場合が多いのです。(アジャイル開発におけるメトリクスとは?などなど)
また、コロナ渦以降特に、ホームオフィスOK、フレックスタイム制仕事OKというのも増えてきている日本トレンドの働き方のようです。(私が日本で働いていた時は、毎朝8時半にオフィス出勤だったのになぁ…)私は昔、ここまでの交通手段は?という業務内容に全く関係ない質問を面接時されたことがあるのですがそんな質問も今はなくなったということなのでしょう。ちなみに当時は「はい?」と首をかしげながら解答しましたが、こんな質問に意味をわざわざ持たせて解答させるのはきっと日本だけ。採用後、通勤可能なのかの判断や、尋ねられた質問に対して分かりやすく答える力があるかを確認しているようなのですが、無駄でしかない!!!!!こんな質問するよりもっとスキルについての質問をした方がためになるのではと心から思います。
色々な職種を体験し、自分に合った職種を時間をかけて選別できる総合職を採用している日本企業と、専門性を高め、その分野で高みをどんどん目指してスキルを高めていける専門職が当たり前のヨーロッパやインド、等の海外企業。どちらが良いのかは一概には言えませんが、国々で特色があり面白いなと感じました。INNOOVも日本企業ではありますが、私を含めた海外ジョイン組や、海外企業のお客様のトレーニングを行っていたりと国際色も豊かです♪勤務体系や時間、制度も働くメンバーによりコミットし、一人ひとりのスキルが生かせる職場であると感じています。
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