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日本で働くあなたに質問です。あなたは働くために生きていますか?それとも生きるために働いていますか?オランダに住む人々の多くは後者だと言うでしょう。そしてそれが本人の幸せのみならず、家族の幸福度にもかかわっているのではないかと思います。
ユニセフが2020年に行った調査によると、OECD加盟国の中でオランダの子ども達の精神衛生が一番良かったということがわかりました。15歳の少年少女達を対象に行った調査ではなんと9割ものオランダ人が自分の人生に高く満足していると答えました(なお、これも対象国内で一位)。そこで今回はなぜオランダの子どもたちは世界一幸せなのか、世界一幸せな子どもたちを育てる親を支える福利厚生に焦点を当ててお話しします。
目次
万全の産休、育休
オランダには Wet arbeid en zorg (WAZO)という法律があり、妊婦は出産予定日の6週前から出産後10週目までの最低16週の休暇がUWVという従業員の保険に関連する行政機関により保障されています(参照)。その期間は妊娠した人にUWVから給与が100%が支払われます。言い換えると、産休が100%有給で行政機関から保障されるということです。また、出産が予定日より遅かった場合でも出産後から10週のカウントがされるので、安心して出産に臨めます。その後出産に関わるか否かに関係なく病気になった場合や、子供が7日以上入院した場合は産休を伸ばすことができます。
パートナーももちろん同時に育休を取ることができます。産後4週間以内のうちの1週間までは給与が100%がUWVによりカバーされ、産後6ヶ月以内のうち5週間は自由に育休をまとめて取ったり、ばらばらに取ったりできます。その際は給与の70%がUWVによって保障されます。(参照)
企業から妊婦への支払いがないため、日本でよく行われる「新婚の女性はすぐに妊娠するから雇わない」などという会話はあまり行われません。そもそもその女性はその企業に帰ってくる前提なので、このような会話自体が的外れなのです。オランダの産休育休制度は企業にも女性にも優しい制度だと言えます。
忌引きや家族の病気もバッチリカバー
オランダには家族が第一という考えが基本的に根付いています。家族や同居人、パートナーが病気になった際は給与の70%、もしくはそれが最低賃金を下回った場合は最低賃金を、フルタイム勤務の場合年間で80時間貰うことができます。もし家族が深刻な病気になった際は、給与は出ませんが長期の休みを取ることもできます(フルタイム勤務の場合年間で240時間)。忌引きやその他の急用の際も休みを取ることができます。加えて、もし養子を引き取ることになった場合は3週間以上前の申請を条件に両親ともに給与の100%を貰いながら6週間の休暇を得ることができます。そしてそれらの休暇を取ったからと言って有給が減ることはありません。このような福利厚生制度が親やその他の大人の心の余裕を生み出し、子どもの幸福度にも関係しているのではないでしょうか。
有給取得のハードルが低い
オランダ人は基本的に個人主義な国民性を持ち合わせているからか、有給取得率がかなり高いです。夏の休暇のみならず、秋に1週間ふらりと有給を取る社員や、インターン中でも「他の企業で正社員登用の試験があるので休む」なんてこともあります。個人的な話をさせていただくと、私のもう一つのインターン先はGoogleカレンダーで休日に設定をするのとミーティング関係者への連絡、自動返信メールの設定のみで簡単に有給を取ることができます。自己責任で有給を取るようには言われても「これ以上とるな」などと有給を細かく管理されることはありません。私の同僚も先週南米旅行に行っていましたが、それを報告した際にチームメンバーは羨ましがるだけで、彼を責めるような雰囲気を作る人はいませんでした。
オランダで働く人々の有給取得率
オランダでは一年間フルタイムで働くと最低20日間(4週間)、平均25日間の有給を得ることができます。2017年にExpediaが行った調査によると、オランダ人の有給消化率は96%でした。国民の祝日が日本に比べてかなり少ないのでトータルの休日日数はあまり変わらないのかもしれませんが、その分自由が利くので好きな時に旅行に行けたり、家族の休みに合わせられるのはオランダで働く利点かもしれません。
Papadagって?
オランダには”Papadag”というものがあります。直訳するとパパの日です。オランダでは時短で働いている場合や、前述の育休中の父親が子供の世話をする日のことをパパの日と呼びます。パパの日でなくても、父親がbakfietsと呼ばれる日本では規格外であろう自転車で子供を幼稚園に送り迎えする姿は特に朝よく見かけられます。私の大学の教授も「娘を幼稚園に送っている途中に娘が手袋をなくしたって言って困ったんだよ」なんて話を当たり前のように授業前に話していました。このように男性も気軽に、当たり前に時短勤務に変更できることから、育児参加に積極的になることができます。
パート勤務でも管理者に?
パート勤務や時短勤務と聞くと、日本では「給料が上がらない」「昇進を諦める」「バイトと同義語」というようなネガティブなイメージがあるのではないでしょうか。しかしオランダではパート勤務でもマネージャークラスの仕事につくことができます。例えば以下のスクリーンショットはLinkedInでオランダエリアでパートタイムの求人を検索した結果です。
求人タイトルからもわかるように、Part timeのマネージャー職の求人が複数あることがわかります。(ちなみにFTEはFull Time Equivalentの略で、FTE=1が週40時間のフルタイム勤務の計算です。したがって0.8FTEは週32時間の時短勤務であることがわかります。)
私がインターンシップをしている会社でも男女問わず産休明けだけ時短勤務をしている方は多いですし、産休育休明けだから、パートタイム勤務だからといってマネージャー職を降ろされることはありません。
このような勤務形態が働き方の多様性を生み、親のキャリアへの満足度が上がります。子どもと過ごす時間をキープしつつもキャリアを諦めずに済むので、子どもは両親と一緒に長い時間を過ごせ、幸せを感じられると考えられます。
オランダ語には”gezellig”という言葉があります。「楽しい」「心地が良い」「なごやかな」などと訳されます。上記の内容からもわかるように、オランダでは家族や自分の”gezellig”な時間を大切にします。日本で働く皆様もこれを機にご自身やご家族にとっての”gezellig”な時間と仕事のバランスを考え直してみてはいかがでしょうか。
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INNOOVでは、現在学生インターンの募集をしています。今年は少しチャレンジングな条件となっていますが、「挑戦したい」という学生が昨年より増えてきています。