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前回、ベルリンはスタートアップ企業にとってハブ的都市と紹介をしましたが、今回は「ベルリンでのキャッシュ事情」と題し、より生活やライフスタイルに密着したテーマでベルリン(ドイツ)の紹介をしていきたいと思います。特に今回は、隣国のオランダに在住しているINNOOV海外部のがっきーさんが執筆した「日常に行き届いたオランダのキャッシュレス事情とは」からインスピレーションを得ましたのでこのブログと読み比べてみても面白いかもしれません。
目次
ドイツは日本よりキャッシュ愛好家が多い?
まず私がドイツに移住して初めのころに感じたのはタイトルの通り「現金主義者」が多いということでした。
実はハンガリーにも留学経験がある私なのですが当時も、ハンガリーは思ったより現金派が多いんだなと感じてはいました。しかし、これはきっと通貨がユーロ (EUR/€) じゃないからなんだろう、ユーロ圏はもっとキャッシュレスなんだろうと勝手に思いながら生活をしてました。(尚、ハンガリーの通貨はフォリント(HUF/Ft)です。)
そんな私の勝手なイメージで成り立っていたヨーロッパのキャッシュ事情ですが、実際ドイツに移住をしてみて、スーパーやドラックストア、レストラン等基本的に支払いを行う場面では、基本現金。見事なほどにイメージと真逆で驚きました。同時になんか親近感のようなものをこれまた勝手に感じたことを今でも覚えています。
周辺国と比べてみてもキャッシュレス後進国って本当?
筆者の体感、ここ2年位で数は減ってきたとは思いますが、今でも現金オンリーのお店がたくさん隣国と比べてもあるのではないかなとは感じます。特に、小さな雑貨店やカフェは現金のみのところが多くあり、どこでもカード決済ができるわけではありません。
また、日本では支払い時「クレジットカード」「電子マネー」を使う方が多いかと思いますが、まずドイツをはじめヨーロッパの方は圧倒的に「デビットカード」(ECカード)での支払いが多いです。そしてブランドも圧倒的にMasterが多く、筆者は(私の中の話ですがVISAカードを使うことがほとんどだった為)カルチャーショックを受けました…。その為、支払いの際にNo現金+Onlyクレジットカード携帯の場合、近くのATMまで降ろしに行く必要があり(その際はお店にIDを置いていく必要あり)…大変な思いをします。
さらには、カード支払いOKとなっていても少額の買い物(5ユーロ未満)ではカード支払いができないお店がドイツにはたくさんあり注意が必要です。その為筆者は、少額の現金は最低でも常に携帯しています。
また右のグラフからもドイツは、キャッシュレス決済の割合が約18%と低いことがわかります。特に体感では、高齢の方ほど現金支払いが多く、カード支払いを避けている方が多いような印象です。
以上を踏まえると、まだまだキャッシュレスが進んでいるとは言えないイメージが伝わるかなと思います。
資料参考:
①各国のキャッシュレス手段別民間最終消費支出に占める割合(2015)
②世界主要国におけるキャッシュレス決済状況(2018年)
現金主義には理由がある
では、なぜ現金がキャッシュレス決済よりも主流になっているのでしょうか?
この理由には「ドイツの戦争敗戦」がかかわっているとされています。まず、第一次世界大戦に敗戦したドイツでは、巨額の賠償金の支払いを強いられたことにより財政破綻によるとんでもないインフレーションに見舞われ、現金の価値が無価値になっています。また、第二次世界大戦ではナチスによる独裁もあったことから、現金がカードや電子マネーに代わること=自分でのコントロールができないと思われそれを回避すべく「見えるお金=現金」が好まれるようになっていると推測されます。また、ドイツは、日本よりもオンラインショップ詐欺が多いため、自分の目で見て、品定めをして現金で支払う。そんな方が多いのかもしれません。そしてチップ文化も大きく関係していると私は考えます。
またクレジットカードが普及せず、デビットカードの流通が多い理由としても、デビットカードの方が自分で支出管理ができ、借金の心配がなく安心できるという事が大きいようです。確かに、使った分がすぐにアプリやサイトに反映もされるのでクレジットカードより安心ですよね。
※蛇足
見える形で保存したいという考えは何かの申請時や契約時にも根強く残っているのか、ドイツの役所・不動産屋・インターネットの契約等は大量の「紙」を利用します。これ、逆に大変なんじゃないかなと思うのですが、紙が基本なようです。(ま、この話はまたの機会にします…)
GeldkarteかEC‐Karte(Girocard)持ってますか?
Geldkarteとは日本でいう電子マネーのことで、Suicaのようなものです。銀行のATMでチャージしてチャージした分のみ使用でき上限は200ユーロまで。PIN不要なので券売機での切符購入の際等に適しているようです。私はまだ使用したことがなく、使用感はわかりません…
EC-Karte/Girokardとはelectronic cashの略でデビットカードのような位置付けになります。ドイツではクレジットカードは使えず、EC-Karteか現金のみの支払い可としている店(カフェや小さなお店は特に注意)が多く持っていないと泡を吹くことがあります。
少額の買い物は現金オンリー?
ドイツでは少額の買い物の際は「現金払い」が基本なようです。よくスーパーでも「5ユーロ以下はカード使えません」と張り紙されているところがあるくらいです。一度現金を使いたくなかったので4.70ユーロの支払いをカードでお願いしたらきっぱり断られました…(四捨五入したら5ユーロじゃないか!!)
ちなみにチップの支払いもお店によっては現金のみが多く、スーパーのカートはコインでロックを解除しないといけないというところもあるので、現金(硬貨)は少額でも必要です。
進むキャッシュレス化
ここまでドイツ人は現金愛好家が多い事や、現金でのやり取りが主流なお店が多いという事を紹介しました。上の表からもわかるようにドイツでは約80%が現金支払いに頼っているようです。(日本は82%)
とはいっても、コロナウイルスの大流行を機に「現金払い」に対しての意識も大きくかわってきたのも事実です。ドイツ約700万人以上の方がコロナウイルスにこれまで感染しており、今もなおコロナウイルスに感染する方が絶えません。
そんな中で、やはり不特定多数の人が触れるものは避けたい・触れたくないというも増え、今までは現金払いをメインで行ってきた人やお店が、一斉にキャッシュレス決済に移行をし始めました。また、ドイツ政府もカード払いをお勧めする広告をだしたり、カフェを中心にカード払いをお願いする張り紙を出すお店も増えたことから現金決済からキャッシュレス決済への切替に勢いが付きました。
更に、カードや電子マネーを管理するアプリの開発も、多くのIT企業(特にスタートアップ)が集うベルリンでは行いやすかった事もキャッシュレス化に勢いがついた理由の一つではないかと筆者は考えます。(なぜベルリンにはITスタートアップ企業が多いのか気になった方はこちら)
勢いがあるといってもまだまだお隣のオランダやデンマーク等の北欧ほどカード払いは浸透していないとが現状ではありますが、支払いに対してより多くの選択肢が増えた事は現地に住む私はもちろん、旅行者にもうれしい事ではないでしょうか?(両替所を探さなくて済むって素敵…)
以上が、筆者である私から見たドイツのキャッシュレス事情になります。お隣同士でもドイツとオランダにはキャッシュレス事業に大きな差があるなと感じた方や、ドイツと日本はさほどキャッシュレス化率が変わらない事を初めて知った!という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん、国や地域によって文化的、地理的、環境的背景から一概にキャッシュレス決済の方が良い・現金決済の方が良いとはいえません。しかし、現金・キャッシュレス双方に対応している決済方法であれば決済時の選択肢が増え柔軟に対応ができるのではないかと思います。
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東京と比べても大差がないほど都会であり、発展しているベルリン。しかし郵便・宅配サービスにフォーカスを当てるとこんなにも差があるのかというほどドイツのサービスは酷。届くはずの荷物が届かなかったり、隣人の荷物を預かれと言われたり、国際便は税関にまず没収されたり…そんなとても不便なドイツの郵便事情について日本のサービスと比較して紹介します。