
それ本当?『コンサル一年目が学ぶこと』をインターン生が読んでみた

『コンサル一年目が学ぶこと』という本をご存知でしょうか?この本は今やコンサルで働く人のバイブル的な存在です。それゆえ「コンサルとはこういうものだ」と受け入れ、懐疑的になることなく読み進める人が大半だと思います。しかし、いわゆる大手コンサルで働いたことのない筆者には「本当にそうなのだろうか、本当にその手法は最適なのだろうか」と思う点が出てきました。今回は筆者が懐疑的に思う点と、コンサルで働く人以外にも通ずる素晴らしい点をどちらも紹介します。
目次
まだExcelでプロジェクト管理してるの?
なぜExcelはプロジェクト管理に向いていないのか
「コンサル一年目が学ぶこと」の第二十二章でExcelを使った課題管理表を作成することが推奨されていました。
Excelが便利なツールであることは間違いないです。特にファイナンスを専攻する私にとっては無くてはならない存在です。しかし、Excelにも正しい使い方とそうでない使い方があります。プロジェクト管理は悪い例の一つです。
Excelはローカルなツールです。基本的には自分のパソコンに取り込んで使い、作業過程を共有することを前提としていません。対してプロジェクトを管理するためにはコンスタントに状況をアップデートする必要があります。状況が変わるたびにファイルを共有フォルダにアップロード、バージョン数だけがどんどん増え、どれが最新か探すのにも一苦労…なんてことが起こり得るのです。
加えて、Excelでプロジェクト管理をするとデータが残りません。筆者自身も海外インターンをした際に、Google Spreadsheet上での客観性に欠けるプロジェクト管理や、ずさんな工数管理を目の当たりにしてきました(詳しくはこちら)。ExcelやSpreadsheet上では、一度何かが書き換えられてしまったら、過去のバージョンと突き合わせて一つずつ見比べない限り、何がどう変わったのか、なぜ変わったのかを見つけることが困難です。データが残らないと、正確に工数を計算することができないので、個人の感覚に頼らざるを得ず、論理的な予算編成ができません。したがってExcelやSpread Sheetを使ったプロジェクト管理はお勧めできません。実際、毎週Spreadsheetが書き換えられてデータが失われるのを見て、辛かったです…
さらに詳しく知りたい方は…
Excelでのリソースプランニングで生じる6つの問題とその解決方法
JiraとTempoを使って解決!
「プロジェクトを管理する」というアイデア自体はいいのですから、そのやり方さえ最適化すればこの問題は解決します。
Jira上のKanbanを使えば、リアルタイムでチームメイトがどの作業に取り掛かっているのか、その作業はどのプロジェクトに紐ついているのかが一目瞭然です。また、Kanban上で動かした「チケット」と呼ばれるタスク単位のカードがどれくらいの時間「作業中」になっているかがわかるので、ボトルネックの解消にも繋がります。Excelを使うとどうしても手動になってしまう工数管理もTempoとJiraを繋げてしまえば、チケットから得られる情報から自動的に工数管理に有益なレポートを作成することができます。
お願いです、データを残すためにもJiraの使用の検討をしてください…
時は金なり?
マイクロマネジメントで無駄が省ける?
マイクロマネジメントとは、上司が部下に対して強く干渉することを指します。具体的には、業務の進捗を逐一確認したり、重箱の隅をつつくような指摘をしたりすることです。
「コンサル一年目が学ぶこと」の第二十五章を読むと、筆者がコンサルで働いていた時の上司がマイクロマネジャーであることがわかります。筆者が休憩していた時、上司に長い時間休憩しているとサボっているように見えて、顧客に悪印象だからやめるよう言われた描写がありました。顧客がコンサルに1時間一万円支払っているとしたら、その数十分も数千円になるから、という理由だそうです。果たしてそれは正しい理由づけでしょうか。
確かに顧客の前で堂々とタバコ休憩をするのは印象が良くないかもしれません。しかしこの上司の考えの根底にあるのはマイクロマネジメントです。筆者の現役時代には問題視されていなかったかもしれませんが、2022年の現在はマイクロマネジメントは「あなたの仕事を信用していない」というメッセージとして捉えられ、チーム内の雰囲気を悪くしてしまいます。このような環境では部下は批判を恐れるようになり、プロアクティブに自分から考えて働くことができなくなってしまいます。加えて、上記の上司の考え方だと、数十分休憩を挟みながら効率的に仕事をこなすより、効率が落ちてきていても休憩せずにデスクの前に座っているだけの方が良い、ということになります。これはいかにもメンバーシップ型の考えであり、実はこまめな休憩を挟むより生産性が落ち、一つの業務にかかる時間が伸び、残業により人件費が嵩んでしまうことになりかねません。
休憩も仕事のうち!
休憩せずにぶっ通しで働き続けると仕事効率が落ちるのは誰の目にも明らかでしょう。25分作業をして5分休んでのサイクルを2-4回繰り返し、その後15-30分の長めの休憩をとるポモドーロメソッドは集中力をキープし、生産性を高めることで有名ですよね。私も大学で3時間の講義を受けるときは45分に一度休憩があるのですが、3サイクル目にもなると集中力はなくなり、教授が言っていることがわからなくなってきてしまいます。仕事でも同じです。生産性をキープするには適度な休憩が必須ですし、その方が集中力が切れた状態でパソコンの前で粘るより早く仕事が終わります。この本の中には「仕事が楽しいから残業する」「残業してでも顧客にバリューを届ける」ことを称賛するような描写もありましたが、恒常的に残業しないと終わらない業務量なのであればマネジメント層に問題があると言わざるを得ません。人員不足なのは明らかですし、それは個人の問題ではなく組織の問題だからです。これからの時代、日本も少しずつジョブ型の働き方が広まり、よりパフォーマンスが重視されるようになることが予想されます。それに伴い、「残業してこそ」というような考え方はアップデートされていくべきだと考えられます。
事実と意見は混同しない!
事実と意見を分けることの重要性とは
上記では少し批判的なことを書いてきましたが、「コンサル一年目が学ぶこと」の全てが悪いわけではもちろんありません。私が一番素晴らしいと思ったのは第十二章の「事実と意見を混同しない」という部分でした。これはプロフェッショナルとして働く上でとても重要なことです。「事実」「解釈」「推奨アクション」を区別し、「だから何なのか」「どうしてそうなるのか」を明確にすることで議事録が書きやすくなったり、上司からフィードバックをもらった時に「プロフェッショナルとして、仕事として」の批判なのか、「個人的なこと」なのかがわかるようになったりします。それがわかるように普段から意識していると、コミュニケーション能力の向上が見込めます。小学生向けですが、NHKのウェブサイトにわかりやすい例があったのでシェアさせていただきます。是非ご一読ください。
まとめ
「コンサル一年目が学ぶこと」は2014年に初版が出版されました。この記事がアップロードされる2022年現在の8年前です。この本の筆者が実際に働いていたのはそれよりさらに前であることがわかります。技術の進歩や企業倫理の変化を考えると、この本の一部は時代遅れになりつつあると言えます。もちろん現在でも役に立つ考え方やメソッドも紹介されていますが、賞賛されることばかりではありません。なので私は盲目的にこの本を「コンサルで働く人のためのバイブル」のように扱うのはどうかと思います。これからは読者の皆様にも一度「本当にそうなのか?」と懐疑的に本やニュースを読んでみてもらえると嬉しいです。
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